大阪大学大学院理学研究科附属フォアフロント研究センター大阪大学大学院理学研究科附属フォアフロント研究センター

Category:開催報告

2026年3月19日(木)、大阪大学豊中キャンパス 理学J棟3階ミーティングスペースにおいて、「第12回(理学の響宴)しゅんぽじおん ー『情報』とは?ー」が開催されました。

本イベントは、研究科内外の研究者・教職員・大学院生と産業界の皆さまとの交流を促し、分野を越えた広い視野から新しい理学の“タネ”を生み出すことを目的として開催されました。当日は、16:00〜17:00にD棟D501講義室にて藤原彰夫教授による最終講義が行われ、その後、引き続き開催されました。60名を超える方々にご参加いただき、会場後方に立ち見の方が並ぶ盛況の中、活発な議論が交わされました。ご参加いただいた皆さまに、厚く御礼申し上げます。

開催概要
 日時:2026年3月19日(木)17:30〜
 会場:大阪大学豊中キャンパス 理学J棟3階ミーティングスペース
 話題提供:波多野恭弘 教授(宇宙地球)、藤原彰夫 教授(数学)
 座長:豊田岐聡 教授(フォアフロント研究センター)

 

前半:波多野教授による話題提供

はじめに、豊田教授から、6年ぶりの開催となる「しゅんぽじおん」の趣旨と経緯について説明がありました。会場にはワインやチーズなどが用意され、参加者は飲み物や軽食を手に取りながら席につきました。前半は、波多野教授から「地震予測と情報」と題して話題提供いただきました。その中では、参加者から次々と質問が寄せられ、地震予測の難しさや機微にかかわる疑問に対しても、丁寧にご説明いただきました。

後半:藤原教授による話題提供

後半は、藤原教授から「What is Information?」というテーマでお話しいただきました。若い世代への熱いメッセージも込められた内容で、参加者からの質問や意見も相次ぎ、白熱した議論が繰り広げられました。議論の締めくくりには、豊田教授から藤原教授へ退職記念品としてワインが贈呈され、参加者全員が祝福する中、6年ぶりの「しゅんぽじおん」は閉会となりました。閉会後も一部の先生方は会場に残られ、引き続き熱心な議論が交わされたとのことです。

関係記事
 開催案内:https://www.frc.sci.osaka-u.ac.jp/news/3130

(FRCシンポジウム事務局)

 2026年3月30日(月)、大阪大学豊中キャンパス 基礎工学国際棟において、FRCシンポジウム「ジオミクスと質量分析技術の新たな展開」を開催しました。年度末にもかかわらず、14の大学・研究機関・企業から70名近い方にご参加いただき、会場は盛況となりました。講演会場では活発な議論が交わされ、情報交換会でも関連研究のポスターを前に交流が深まりました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。

開催概要
 日時:2026年3月30日(月)14:00〜17:30(情報交換会 17:45〜)
 会場:大阪大学豊中キャンパス 基礎工学国際棟 シグマホール(対面のみ)
 主催:⼤阪⼤学⼤学院理学研究科 附属フォアフロント研究センター
 共催:⼤阪⼤学⼤学院理学研究科 共通施設質量分析センター

 本シンポジウムは、先端質量分析技術を基点として多様な分野に展開する分野横断型学術「ジオミクス」の活動と成果を広く知っていただくことを目的として開催されました。あわせて、連携のさらなる拡充・強化を図るとともに、当年度に新たに設置された質量分析センターの活動や装置共用体制を紹介し、広く活用していただく機会としました。

第一部の講演の様子

 第一部では、⼭梨県富⼠⼭科学研究所の吉本充宏研究管理幹、東京⼤学の⾓野浩史教授にご登壇いただき、富士山の成り立ちや特徴、通説を覆す新たな発見、さらには先端質量分析技術を用いて火山や地殻の「息吹」を捉える最新研究についてご講演いただきました。第二部では、本学の和泉⾃泰教授、⼤塚洋⼀准教授から、⽣命科学における質量分析の二つの潮流であるオミクス解析技術とイメージング技術に関する研究成果が紹介されました。また、豊⽥岐聡教授からは、質量分析センターの概要に加え、装置共用拠点としての機能や利用方法について詳しい説明がありました。各講演後には、参加者から次々と質問やコメントが寄せられ、活発な議論が展開されました。

情報交換会で研究紹介ポスターを前に意見を交わす参加者

 シンポジウム終了後には、講演会場前のホワイエにて情報交換会を開催しました。関連研究グループによる研究紹介ポスターが並ぶ中、さまざまな分野・組織からの参加者が、随所でポスターを前に意見を交わす姿が見られ、会場は大いににぎわいました。本シンポジウムを通じて、多くの方にジオミクス研究や質量分析技術の応用・活用に関心を持っていただくとともに、研究者間のつながりを広げる貴重な機会となりました。今後、関連分野を横断した交流と連携のさらなる進展が期待されます。

当日プログラム
 開会挨拶 豊⽥岐聡(FRC センター長)
 【第一部】⽕⼭と地殻のジオミクス 
      座長:⼤阪⼤学|豊⽥岐聡(教授)
  14:02 富⼠⼭との共⽣ ― ジオミクス連携で⾒えてくる世界 ―
      ⼭梨県富⼠⼭科学研究所|吉本充宏(研究管理幹)
  14:45 オンサイト同位体分析が拓く新たな⽕⼭・断層の活動度モニタリング
      東京⼤学|⾓野浩史(教授)
 【第二部】⽣命科学における質量分析のトレンドと装置開発・共⽤拠点 
      座長:⼤阪⼤学|寺田健太郎(教授)
  15:45 ⽣命科学研究の深化を⽬指した質量分析マルチオミクス解析技術の開発
      ⼤阪⼤学|和泉⾃泰(教授)
  16:30 細胞代謝変容を可視化する質量分析イメージング技術の開発
      ⼤阪⼤学|⼤塚洋⼀(准教授)
  17:15 理学研究科共通施設 質量分析センターの紹介
      ⼤阪⼤学|豊⽥岐聡(教授)
 (17:45〜 情報交換会)

ポスター発表
 北海道大学 農学研究院 当真要教授
 東北大学 大学病院薬剤部 前川正充准教授
 東北大学 農学研究科食品機能分析学分野 加藤俊治准教授
 筑波大学 生命環境系 丸岡照幸准教授
 東京大学 先端科学技術研究センター 角野浩史教授
 山梨県富士山科学研究所 富士山火山防災研究センター 山本真也主任研究員
 山梨県富士山科学研究所 富士山火山防災研究センター 西澤達治研究員
 大阪大学 理学研究科附属フォアフロント研究センター 豊田岐聡教授
 大阪大学 理学研究科附属フォアフロント研究センター 益田勝吉教授
 大阪大学 理学研究科共通施設質量分析センター 和泉自泰教授
 大阪大学 理学研究科共通施設質量分析センター 秦康祐講師
 大阪大学 理学研究科共通施設質量分析センター 三宅ゆみ助教
 大阪大学 理学研究科共通施設質量分析センター 鳥越大平研究員
 大阪大学 理学研究科宇宙地球科学専攻 寺⽥健太郎教授
 大阪大学 理学研究科物理学専攻 大塚洋一准教授
 関西大学 化学生命工学部化学・物質工学科 川﨑英也教授
 公立鳥取環境大学 環境学部 山本敦史准教授

関係記事
 開催案内:https://www.frc.sci.osaka-u.ac.jp/news/3139

(FRCシンポジウム事務局)

Category:

日時: 2025年3月21日(金) 16:00〜18:00
会場: 大阪大学理学研究科J棟 南部陽一郎ホール
座長:益田 勝吉 教授
話題提供:

(1)大塚 洋一(挑戦的個人研究部門
        ピコ液体の精密流体制御による極微質量分析イメージングの創成プロジェクト代表・准教授)
(2)中川 拓郎(挑戦的個人研究部門
        染色体異常の発生メカニズムの解明プロジェクト代表・准教授)

概要:
(1)前半では、「ピコ液体の精密流体制御による極微質量分析イメージングの創成」プロジェクト代表の大塚先生から、独自の抽出ーイオン化法の開発の経緯と最近の研究成果をお話しいただいた。生体組織では細胞内外で多種多様な化学反応が生じ、健康状態が維持される。したがって、生体組織に含まれる分子の変化を精密に分析する技術は、ライフサイエンス分野の研究開発において重要となる。質量分析イメージング(MSI)は、試料内の分子の分布を画像として可視化する技術である。


図1. 質量分析イメージングの概要

 大塚准教授は、生体組織の脂質成分のMSIを行うために、独自の抽出ーイオン化技術(t-SPESI)の開発を主導してきた。t-SPESIは、原子間力顕微鏡とエレクトロスプレーイオン化を融合した技術であり、ピコリットル以下の極微量の溶媒を用いて、生体組織のマイクロスケールの領域に含まれる成分を分析することを可能にする。


図2. t-SPESIの装置構成と特徴

 高精細な質量分析イメージングを実現するための様々な要素技術の開発に取り組むと共に、異分野の研究者との共同研究を推進してきた。一例として、マウスの精巣組織のMSIでは、精子形成に重要なドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する脂質などの分布を可視化することに成功した(図3)。


図3. マウス精巣組織のリン脂質の分布

 本技術を様々な生体組織に適用し、疾病を引き起こす多様な分子の分布を調べることで、新たな治療法や診断技術の創成に繋げていきたいと考えている。Q&Aでは、本技術による細胞内構造の観察の現状と展望、代謝分析への展開の可能性、生体組織の物理的性質も含めた計測手段としての発展性などについて、各分野の専門家との活発な議論が行われた。

(2)後半では、「染色体異常の発生メカニズムの解明」プロジェクト代表の中川先生から、染色体のセントロメア領域のDNA反復配列を「のりしろ」にして起こる染色体異常の発生メカニズムについて報告いただいた。
 まずは真核生物の染色体の基本的な構造と染色体に含まれるDNAの役割について説明があった。DNAを鋳型にして、転写と呼ばれる細胞内の反応によりRNAが合成される。次に、RNAを鋳型に翻訳と呼ばれる反応によりタンパク質が合成される。タンパク質の種類や量などによって細胞ひいては生物の運命が決定される。しかし、転座や欠失などの染色体異常が起きるとDNAが変化するために、がんなどのヒト遺伝性疾患が引き起こされること、また、がんは現在日本人の死亡原因の第一位であることが紹介された。


図4. 染色体構造とDNAの役割

  真核生物である分裂酵母を用いた解析により、染色体のセントロメア領域に存在するDNA反復配列を介して同腕染色体と呼ばれつ異常染色体が形成することを明らかにした。同腕染色体はセントロメア領域を中心に左右の染色体腕が鏡像関係となった異常染色体であり、ダウン症やターナー症の原因となるだけでなく、ヒトのがん細胞でもよく見られる。これまでに、DNA相同組換え、DNA複製、細胞周期チェックポイント機構、ヘテロクロマチン構造が染色体異常を抑制する一方、Rad52をはじめ幾つかの遺伝子は染色体異常を促進することを明らかにした。今回は、ヘテロクロマチン構造が正常に形成されないとき、転写によりRループと呼ばれるDNA-RNAヘテロ二本鎖を含む異常な核酸構造が形成され、それにより染色体異常が起こることが説明された。今後、この系を用いて、染色体異常の発生に関与する新たな因子を同定し、その機能を解明することで染色体異常の発生メカニズムの解明を目指す。


図5. 分裂酵母のセントロメア領域で起こる染色体異常

 Q&Aではヒトを含め他の真核生物で起きる染色体異常との共通原理、細胞膜と染色体異常との関係、更には、物理化学的な応用研究への展開などについて活発な議論があり大いに盛り上がった。
 最後に、話題提供者のお二人からFRCで活動する中で得たものとして、分野を越えた研究者間の議論や交流の重要性を指摘いただき、参加者からも多くの賛同の声があった。

(文責:FRC談話会事務局)

日時: 2025年1月22日(水) 16:00〜18:00
会場: 大阪大学理学研究科J棟 南部陽一郎ホール
座長:松本 卓也 教授
話題提供:

(1)吉田 斉(分野横断プロジェクト研究部門
        同位体濃縮技術の開発と実用化と放射線検出器への応用プロジェクト代表・准教授)
(2)佐藤 朗(分野横断プロジェクト研究部門
        先端ミューオン科学による文理協力型学術創出プロジェクト代表・助教)

概要:
(1)前半では、「同位体濃縮技術の開発と実用化と放射線検出器への応用」プロジェクト代表の吉田先生から “ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊” の発見を目指す挑戦についてお話しいただいた。極めて稀な原子核の崩壊様式として、二重ベータ(ββ)崩壊がある。ニュートリノがマヨラナ粒子(粒子と反粒子が同じであるフェルミオン)である場合に、ニュートリノを放出しない二重ベータ(0νββ)崩壊が起こる。その半減期は、1028年以上と予測されており、 発見された場合の物理的意義が非常に大きく、素粒子物理学に突き付けられたいくつかの謎(物質優勢宇宙、ニュートリノだけが極めて質量が小さい、ニュートリノ質量の絶対値や階層性など)の解明につながると言われている。


図1. ニュートリノを放出しない二重β崩壊とその探索の物理的意義

大阪大学が中心となり推進しているCANDLES実験プロジェクトは、48Ca同位体を使った0νββ崩壊の発見を目指している。 ββ崩壊核種としての48Caには、天然同位体比が低く(0.2%)、大量に同位体濃縮する手法が確立していないという欠点がある。他方で、0νββ崩壊のような極稀事象の探索には、極低バックグラウンド環境が必須であり、48Ca同位体は、背景事象を増やすことなく感度を500倍改善できる潜在能力を有している。当プロジェクトでは現在、大強度レーザーを利用した新しい同位体濃縮手法の開発を進めており、原理検証や大量生成に向けた取り組みについて紹介された。


図2. Ca同位体濃縮の原理と濃縮手法開発装置

Ca同位体濃縮の開発とともに、背景事象の低減には検出器のエネルギー分解能が重要である。素粒子標準模型で許されるニュートリノを放出するββ崩壊は、 0νββ崩壊よりも崩壊率が8桁以上も大きく、Q付近で0νββ崩壊事象の背景事象になってしまう。プロジェクトでは、新たに極低温(~10 mK)に冷却したCaF2結晶を放射線の検出に利用することで、エネルギー分解能の優れた蛍光熱量検出器を開発している。この検出器開発に向けた取り組みと現状についても紹介された。


図3. エネルギー分解能と背景事象除去性能の優れた蛍光熱量検出器の原理

(2)後半では、「先端ミューオン科学による文理協力型学術創出プロジェクト」代表の佐藤先生から、大阪大学を中心としたミューオン科学の展開状況についてお話しいただいた。ミューオンは、宇宙を構成する最小単位である素粒子の一つで、電子とよく似た性質を持つが、質量は電子の約207倍も大きい。従来、ミューオンは基礎科学の研究対象やプローブとして活用されてきたが、近年では、地上に降り注ぐ宇宙線ミューオンを利用したピラミッドなどの大規模構造物の透視や、大型加速器によって人工的に生成されたミューオンビームを用いた文化財の非破壊元素分析など、多様な応用研究が活発に展開されつつある。


図4. 連続状ミューオン施設RCNP-MuSICの装置。 本学吹田キャンパスの核物理研究センター内に設置されている。

 大阪大学は、国内唯一の連続状ミューオン施設 RCNP-MuSIC を有するとともに、ミューオン研究を得意とする多様な分野の研究者が多数在籍しており、ミューオン研究において極めてユニークな環境にある。この優位性を生かし、大阪大学にミューオン科学創成の拠点を設置することを目指して、文系・理系の枠を超えて、学内外の研究機関や産業界と協力しながら、ミューオンの新たな活用開拓、啓蒙活動、人材育成に取り組んでいることが紹介された。


図5. ミューオンX線の発生原理。 特性X線のエネルギーは原子核を周回する粒子のエネルギーに比例するため、ミューオンX線は高いエネルギーを持つ。

 また、ミューオンの応用利用例として、ミューオン特性X線を用いた希少資料の非破壊元素分析の進展についても説明があった。ミューオン特性X線は、電子特性X線に比べて約200倍高いエネルギーを持ち、この特性を利用した本分析手法では、古代青銅器のように表面が腐食した資料であっても、その状態に左右されることなく、特定の深さをピンポイントで分析できる。このため、考古学や文化財科学の分野で高い関心を集めている。すでに、緒方洪庵の薬剤やリュウグウの石、古代ローマの鏃など、多くの資料が分析されており、その成果はニュースなどでも大きく取り上げられたことが紹介された。


図6. ミューオンX線元素分析における分析領域。荷電粒子であるミューオンはその入射エネルギーを調節することで、測定資料の任意の深さをピンポイントに選択して分析することができる。

(文責:FRC談話会事務局)


今後の開催予定

 2025年3月21日(金) 第7回FRC談話会
  時間帯・場所:16-18時・南部陽一郎ホール

日時: 2024年3月13日(水) 16:00〜18:00
会場: 大阪大学理学研究科J棟 南部陽一郎ホール
座長:水谷泰久 教授
話題提供:

(1)松本浩典(分野横断プロジェクト研究部門
        宇宙多波長精密観測プロジェクト代表・教授)
(2)髙島義徳(挑戦的個人研究部門
        環境調和型高分子材料研究開発プラットフォーム構築プロジェクト代表・教授)

概要:
(1)前半では、「宇宙多波長精密観測プロジェクト」代表の松本先生から、赤外線観測による重力マイクロレンズ現象を使った系外惑星探査 について、そして2023年9月に打ち上がったX線分光撮像衛星XRISMに関する研究が紹介されました。ここでは、XRISMに関する話題を説明いたします。
 X線で宇宙を観測すると、可視光線で見た宇宙とは全く別の姿が見えます。例えば図1は、おとめ座銀河団の可視光画像 (左) とX線画像(右) を示しています。


図1. おとめざ銀河団の可視光画像 (左) と X線画像 (右)

可視光で見ると単なる銀河の集合ですが、実は銀河団全体は数千万度の高温ガスで満たされているので、X線だと銀河団全体がぼうっと輝いています。X線は一般に高エネルギー現象が発生している場所で発生します。宇宙X線の観測は、宇宙の高エネルギー現象を調べるための重要な手段です。
 日本にとって最新のX線天文衛星XRISMは、小型月着陸実証機(SLIM)と共に、H-IIAロケット47号機(H-IIA・F47)によって、種子島宇宙センターから2023年9月7日に打ち上げられました。大阪大学のX線天文学グループは、XRISMに搭載されたX線CCD (図2) の開発において、中心的な役割を果たしました。


図2. XRISM に搭載された X線CCD

このX線CCDは、満月よりも広い視野を持ち、広範囲の宇宙のX線画像を取得することが主な目的です。XRISMには、X線マイクロカロリメーターという、原子の特性X線の微細構造まで見分けられるような高精度X線分光器も搭載されています。ただ、画像をとることは得意ではないので、X線CCDとX線マイクロカロリメーターはお互いに相補的な役割を果たします。
 XRISMは打ち上げ後、順調に初期立ち上げを行い、2024年1月、ついにファーストライトを公開しました (図3)。この成果に関しては大阪大学理学部からもプレスリリースを行っていますので、そちらもご覧ください。


図3. XRISM 搭載X線CCD で観測した銀河団Abell2319

これからXRISMは、本格的な天体観測のフェーズに入ります。我々は、X線CCDとX線マイクロカロリメーターを組み合わせ、画期的な成果をあげていきたいと考えています。

(2)後半では、「環境調和型高分子材料研究開発プラットフォーム構築プロジェクト」代表の髙島先生から、水に関係した機能性高分子材料が紹介されました。
 多様な水和環境における超分子ヒドロゲルの力学特性及び超分子架橋の振る舞い
 シクロデキストリン(CD)とビオロゲン末端を有するアルキル鎖ゲスト分子の包接錯体を超分子架橋点として持つヒドロゲルを作製し(図4)、含水率を変えながら力学特性及び動的粘弾性を評価しました。
 約30~40重量%の含水率の時、超分子ヒドロゲルは架橋率に関係なく最も強靭でした。含水率が低いと高分子鎖がガラス状に振る舞い、超分子架橋の可逆性が働かないことが示唆されました。含水率が高すぎると、超分子ヒドロゲルは柔らかくなる上に架橋が効果的に応力分散できないため、最終的に超分子ヒドロゲルの靭性は低下したと考えられます。
Supramol. Mater., 2022, 1, 100001.)


図4. 水中でのCDとゲスト分子の包接錯体形成に関する分子動力学シミュレーションと得られた超分子ヒドロゲル

非共有結合形成により促進された異種材料間接着
 ホスト-ゲスト錯体形成とアミド結合形成の相乗効果を利用した異種材料接着を行いました(図5)。CD/COOH修飾ヒドロゲルとアダマンタンアミン修飾ガラス基板を24時間接触させることで、包接錯体形成に基づき接着しました。次いで縮合剤溶液を浸漬させてアミド結合を形成させたところ、接着強度が向上した。比較対象のCOOH修飾ヒドロゲルとNH2修飾基板(包接錯体無し)の場合と比較して、接着強度が3倍向上しました。競争阻害剤で包接錯体を解離させた場合でも、約2倍の接着強度を維持しました。単なる2種の結合の合算に留まらず、ホスト-ゲスト錯体形成がアミド結合形成を促進したことが示されました。
ACS Appl. Polym. Mater., 2021, 3, 2189-2196.)


図5. ホスト-ゲスト錯体形成により促進される効率的な共有結合形成

材料‐水界面の水和構造の最適化
 ポリアクリルアミドを主鎖とし、環状ホスト分子であるCDと相互作用のあるアダマンタンを高分子主鎖に修飾しました(pAAm-βCD-Ad(x,y); 図6)。pAAm-βCD-Ad(x,y)は分子認識を通して架橋され、自己修復性を示しました。pAAm-βCD-Ad(x,y)の力学特性は含水量に依存し、機能性官能基ユニットの含有量に応じて、40 wt%周辺の含水率で破壊エネルギーが最大となりました。pAAm-βCD-Ad(x,y)の破壊エネルギーや材料間の接着には、最適な含水率が存在することが示されました(図6)。
Macromolecules, 2021, 54, 8067-8076.)


図6. pAAm-βCD-Ad(x,y)の化学構造とpAAm-βCD-Ad(x,y)が示す分子接着挙動の推定構造

(文責:FRC談話会事務局)

 

日時: 2024年1月23日(火)16:00〜18:00
会場: 大阪大学理学研究科J棟 南部陽一郎ホール
座長:村田道雄 教授
話題提供:
(1)梶原康宏(分野横断プロジェクト研究部門
        理研・理学研究科連携先端計測プロジェクト代表・教授)
(2)長峯健太郎(分野横断プロジェクト研究部門
        理論連携研究プロジェクト代表・教授)

概要:
(1)前半では、「理研・理学研究科連携先端計測プロジェクト」代表の梶原先生から、糖鎖の機能解明の研究についてお話しいただいた。

 生体内では様々な構造の糖鎖がタンパク質に結合し、タンパク質の活性、機能を制御している。しかし、その糖質の作用機序は実際のところよくわかっていない。まず最初に、これら糖鎖の構造と機能について説明された。


  図1 糖タンパク質と、それを構成する糖鎖の様々な構造

 次に、本プロジェクトでは、核磁気共鳴装置をはじめとする様々な分析方法を利用し、糖鎖の機能を明らかにする研究を推進していることが紹介された。特にヒト型糖鎖が結合したタンパク質であり、ヒト赤血球を増加させる活性をもつ「エリスロポエチン」をモデルに化学合成を通して糖鎖構造を変え、糖鎖構造と生理活性の関係を調べていると話された。


  図2 3分枝糖鎖を有するエリスロポエチン(EPO)の精密化学合成

エリスロポエチンの場合、糖鎖の枝分かれ度が3つになると、赤血球の増殖活性が向上することが化学合成を通して確認された。これは、その糖鎖の体積が増加し、水との相互作用が変化したことが原因の一つと考えられるとのことである。さらには、糖鎖と水の相互作用を核磁気共鳴法で分析するユニークな方法を見つけたことも紹介された。

 Q&Aではタンパク質の相互作用に対する糖鎖の機能や、水分子の構造と糖鎖構造の関係などについて各分野の研究者と議論が交わされた。

(2)後半では、「理論連携研究(Theoretical Joint Research; TJR)プロジェクト」代表の長峯先生から、これまでのTJRプロジェクトの活動状況と、宇宙物理に関する最近の話題をお話しいただいた。
 まずはTJRが前身の理論科学研究拠点からどのような変遷を経て、立ち上げに至ったのかについて説明があった。「理学部の理論系の風通しをよくして、新しいことが生まれやすいように横串を刺すことを目的とする。理論科学を軸に研究者が集まり、大阪大学から発信される新しい科学の芽を育てていく。阪大に科学のるつぼを造る」というTJRの理念とビジョンの説明があった。その主な活動の一つである「南部コロキウム」が、2013年からこれまでに45回の講演会を重ねてきたことや、R5年度に共催したいくつかの研究会などについて紹介があった。
  TJRのHP: https://www.phys.sci.osaka-u.ac.jp/nambu/tjr/
  南部コロキウムのHP: https://www.phys.sci.osaka-u.ac.jp/nambu/


  図3 TJRプロジェクトの理念と概要

 次に宇宙構造形成の現状と展望についての解説があった。特にダークマターとダークエネルギーに支配された宇宙がどのように進化するのか、これまでの研究と理解が大まかに紹介された。最も有力である冷たい暗黒物質(Cold Dark Matter; CDM)が支配的なモデルだと、図4のように小スケールでClumpinessが目立つ構造ができることがN体シミュレーションを用いて示された。そして、他にもWarm DM, Fuzzy DMなど、様々な質量をもつダークマターが構造形成に及ぼす影響について研究が進んでいることの説明があった。


  図4 ダークマターによって形成される宇宙大規模構造(Uchuu simulation; Ishiyama et al. 2021)

 さらに、このような大規模構造を持つビッグバン膨張宇宙において、どのように銀河や巨大ブラックホールが共に成長してきたのか?という研究が紹介された。特に2021年12月に打ち上げられたジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、深宇宙において新しい銀河や巨大ブラックホールを発見し始めていて、理論モデルを上回る発見率によってモデルと観測の間でtensionが生じ始めている現状が紹介された。今後の初期宇宙のさらなる研究が期待されるところである。


  図5 最新の宇宙望遠鏡が取り組んでいる研究テーマの例 

 Q&Aでは、会場の参加者からダークマターの探査方法や、ダークエネルギーの性質などについて多くの質問が出て、活発な議論が行われた。

(文責:FRC談話会事務局)


今後の開催予定

 2024年3月13日(水) 第5回FRC談話会
  時間帯・場所:16-18時・南部陽一郎ホール

日時: 2023年12月13日(水)
   16:00〜18:00(談話会), 18:00〜 (懇親会) 
会場: 大阪大学理学研究科J棟 南部陽一郎ホール(オンサイトのみ)
座長:兼田加珠子 教授
話題提供:
(1)深瀬浩一(分野横断プロジェクト研究部門
        医薬健栄研・理学研究科協働免疫制御プロジェクト代表・教授)
(2)兼松泰男(分野横断プロジェクト研究部門
        「光×質量分析」プロジェクト代表・教授)
概要:
(1)前半は、医薬健栄研・理学研究科協働免疫制御プロジェクト代表の深瀬先生から、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所(医薬健栄研)と共同で進めているワクチンとアジュバント開発プロジェクトの研究活動を報告いただいた。

アジュバントとは、ワクチンの効果を高めるために、ワクチンと共に投与される物質で、ワクチン開発の鍵を握る。モノリン酸リピドA (3D-MPL)やCpG DNAなど複数の自然免疫活性化因子がアジュバントとして実用化されている。まず自然免疫の働き、中でも抗体産生などの獲得免疫活性化について紹介された。

3D-MPLはグラクソスミスクライン社で実用化されたリピドA誘導体であり、サルモネラ菌のリポ多糖から誘導されたものである。本研究科におけるリピドA研究の歴史や免疫増強活性発現機構解明への貢献など3D-MPL開発に導く、基礎研究の貢献が紹介された。

医薬健栄研の國澤純博士はAlcaligenes属細菌が小腸粘膜組織のリンパ節であるパイエル板に共生することを見出していたので、Alcaligenes faecalisの細胞膜(外膜)構成成分であるリポ多糖の単離精製・構造研究を行い、リピドAが活性中心であることを合成化合物を用いて示した。合成A. faecalisリピドAが適度な免疫活性化能を有し、粘膜免疫と全身性免疫の両方を効果的に活性化する有望なアジュバントであること、このアジュバントを含む経鼻ワクチンは、マウスモデルで病原体に対して優れた防御効果を有することが紹介された。

以上のように、独自の基礎研究を基盤として、アジュバントやワクチン実用化を見据えた研究が報告された。

(2)後半は、「光×質量分析」プロジェクト代表の兼松先生から、フェムト秒レーザーを用いた質量分析イメージング法の開発について、また関連する近年のノーベル物理学賞・化学賞の対象研究について紹介いただいた。

質量分析の初段となる脱離・イオン化の過程を超短パルスレーザーで行うことで、材料表面から放出された電子による静電的・非熱的なイオンの引き抜きが起き、光強度を抑制すればソフトで空間分解能の高い分析が期待できる、とのことである。

 

開発した装置は下図のように、フェムト秒レーザー光の走査照射システムを飛行時間(TOF)型質量分析装置と組み合わせている。波長800 nm, 周期200 kHz, パルス幅160 fsの超短パルス光をXY2軸のガルバノミラーで制御することで試料表面のイオン化ポイントをスキャンし、質量分析イメージングを可能にしている。

 

次の図はパルス光強度を変化させて得たヨウ化セシウム膜の分析結果である。上段はイオンのTOFスペクトル、中段はTOFスペクトルの内、単一イオン過程(赤)、複数イオン過程の1個目(青)、2個目以降(黄)を色分けして示している。光強度を低く制御することでピーク幅が狭くなり、単一イオン過程が支配的となることがわかる。また、下段は空間分布(縦軸)とTOF(横軸)に対してイオン強度をマッピングした図で、いずれのパルス光強度でもイメージング分析に成功している。

光によるイオン化機構には共鳴/非共鳴の多光子吸収、超閾イオン化などがあるが、フェムト秒レーザではその強い光電場による原子ポテンシャルの変形が電子放出を引き起こしているらしい。

また、光と物質に関わる関連研究として、ノーベル賞の対象研究から フェムト秒分光( 1999年化学賞)、光コム( 2005年物理学賞)、超解像蛍光顕微鏡( 2014年化学賞)、 高強度超短光パルス( 2018年物理学賞)、アト秒レーザー( 2023年物理学賞)、量子ドット( 同化学賞)など、歴史から最先端動向まで詳しく紹介いただいた。

Q&Aでは各分野の視点から表面分子の光イオン化の描像や今後の展開への期待について突っ込んだ議論が行われた。また談話会終了後はJ棟3階のミーティングルームに場所を移して懇親会を行い、参加者の交流と親睦を深めた。

(文責:事務局 吉井)


今後の開催予定

 2024年3月13日(水) 第5回FRC談話会
  時間帯・場所:16-18時・南部陽一郎ホール

日時: 2023年11月8日(水)16:00〜18:00
会場: 大阪大学理学研究科J棟 南部陽一郎ホール(オンサイトのみ)
座長:兼松泰男 教授
話題提供:
(1)松本卓也(分野横断プロジェクト研究部門
        マテリアル知能による革新的知覚演算システムの構築
        プロジェクト代表・教授)
(2)越智正之(挑戦的個人研究部門
        波動関数理論に基づく高精度な第一原理計算手法の開発
        プロジェクト代表・准教授)
概要:
(1)前半は、マテリアル知能による革新的知覚演算システムの構築プロジェクト代表代表の松本先生から、神経型情報処理を指向した分子ネットワーク構築に向けた研究活動を報告いただいた。
 まず、物質や材料のネットワークに本質的に内在する計算能力を引き出す「マテリアル知能」の考え方が紹介され、人工知能(AI)の普及により問題となってきた計算爆発を回避する方法論の一つとなりうることが示された。

 次に、神経モデルと物理ネットワークとの対応関係に基づき、マテリアル知能研究において物性科学が目指すべき電気特性の特徴が示された。具体例として、d軌道共鳴トンネル、電気伝導性高分子グレイン間のホッピング、フラーレン超薄膜への希薄ドーピング、ポリオキソメタレートのメモリ効果など、様々な化学系を用いた試みが紹介された。

 それらの中で、湿潤ポリアニリン薄膜のイオン伝導を利用した音声認識が示された。6人の話者による英語のゼロからナインまでの音声識別がすでに成功している。

 最後に、このような研究は分野横断的であり、フォアフロント研究センター(FRC)のような組織が適していること、実際に学術振興会の国際交流拠点プログラム https://nanochem.jp/core2core/ において、FRCにおいた本プロジェクトが日本側センターとして認識され採択されたことが報告された。

(2)後半では、「波動関数理論に基づく高精度な第一原理計算手法の開発」プロジェクト代表の越智先生から、固体における高精度な第一原理計算手法の開発を目指す研究活動を報告いただいた。
 まず、物質中で電子がどのような状態をとるか、そしてそれを理論計算からどのようなアプローチで調べるかについて、基礎からの解説があった。固体の電子状態計算(第一原理計算)における、密度汎関数理論(DFT)と波動関数理論(WFT)という2つの理論的枠組みについて、それぞれの長所と短所が示され、特に本プロジェクトで用いるWFTの特徴を詳しく説明いただいた。

 次に、本プロジェクトで用いる理論手法が、どのようなアイディアに基づくものであるか、またその利点は何か、現在までにどのような物理量が計算できているかについて説明いただいた。本手法では特に、二つの電子の避けあいを記述する「ジャストロウ因子」が重要な役割を果たしている。

 現在は、研究に用いる計算コードをオープンソースで公開しつつ、応用に向けた理論開発を進めているとのこと。最先端の研究の現状や、今後の展望についても紹介いただいた。Q&Aでは会場の参加者から、第一原理計算分野における現在の限界・課題や、将来へ向けた発展の可能性などについて、活発な議論が行われた。
(文責:事務局 吉井)


今後の開催予定

 2024年1月23日(火) 第4回FRC談話会
 2024年3月13日(水) 第5回FRC談話会
  時間帯・場所:いずれも16-18時・南部陽一郎ホール

日時: 2023年10月3日(火)16:00〜18:00
会場: 大阪大学理学研究科J棟 南部陽一郎ホール(オンサイトのみ)
    https://www.sci.osaka-u.ac.jp/ja/nambu-hall/#access
座長:梶原康宏(分野横断プロジェクト研究部門 部門長・教授)
話題提供:
(1)豊田岐聡(センター長、フォアフロント研究部門 部門長・教授)
(2)真鍋良幸(挑戦的個人研究部門
        糖鎖ケミカルバイオロジー研究プロジェクト代表・助教)
概要:
(1)前半は、先端質量分析学研究プロジェクト代表の豊田先生から、質量分析装置の開発からその応用展開に向けた活動を報告いただいた。まずは質量分析の基礎から、阪大独自のマルチターン飛行時間型質量分析計(MULTUM)の開発に至る経緯、そのコンセプトと動作原理、装置設計と、実動作に至るまでの苦労を紹介いただいた。独創的な装置開発の背景には、高分解能を得るためにイオンを周回させ飛行距離を稼ぐ着想、その際に収差が蓄積しないよう周回毎にイオンを初期状態に戻すイオン光学系の設計があり、試作当初は3周しか回らなかったイオンを繰り返し回すための様々な工夫があった。

図1. イオンを8の字形に周回させるマルチターン飛行時間型質量分析計(MULTUM)

 周回に成功すると、その質量分解能は当初目標の数千を大幅に上回る35万以上を達成し、小型軽量でかつ高性能、という新たな領域を開拓する質量分析装置が実現できた。

図2. コンパクトでかつ高性能のMULTUMが狙う領域

 プロジェクトでは現在、この特徴を活かして装置を様々な現場に持ち込むオンサイト分析への展開を進めている。一例として土壌から発生するCO2とN2Oの測定に取り組んだ事例紹介があった。従来は手作業でサンプリングしていた土壌ガス測定にMULTUMを持ち込むことで、2週間の24時間連続測定が実現し、降雨とN2O発生の関係や時間変化を明確に捉えることに成功した。今後は医療や食品、宇宙・地球科学など様々な分野への展開を目指すとのこと。将来的に、地球を取り巻く生態圏の原子・分子を網羅的に解析する「ジオミクス」構想についても話していただいた。

図3. 生態圏を網羅的に解析する「ジオミクス」構想

 Q&Aでは、イオン周回実現のポイントや、応用展開のターゲット、それに向けた課題などについて議論があり大いに盛り上がった。

(2)後半は、糖鎖ケミカルバイオロジー研究プロジェクト代表の真鍋先生から、有機合成を基盤として糖鎖機能の解明と制御を目指す研究活動を報告いただいた。まずはこれまでの研究概要を紹介いただいた。糖鎖は2糖3糖といった比較的小さな糖フラグメントでも機能を持つが、“糖鎖”として複雑な構造を持つことで、多点認識や配座制御などの効果により、機能が複雑化する。さらに、これがタンパク質や脂質と複合化することで、より高度な生体機能制御に関わる。真鍋先生は、こういった高次の糖鎖機能に化学的なアプローチで迫ってきた。すなわち、効率的な糖鎖合成法を開発し、それを基盤として非常に巨大な複合糖質中分子を精密に化学合成し、巨大な糖鎖、複合糖質ならではのユニークな機能の解析と制御を進めてきた。

図4. 高次の糖鎖機能に迫る合成化学的アプローチ

 現在、FRCの挑戦的個人研究部門のプロジェクトでは、特に細胞表層における糖鎖の機能解明・制御を目指して研究を進めている。細胞表層にはグリコカリックス(糖衣)と呼ばれる糖の層があり、膜上でのイベントを緻密に制御している。しかし、その分子レベルでの機能解析はほとんど進んでいない。本プロジェクトで、このグリコカリックスを化学的に編集する技術を開発し、将来的に、細胞表層糖鎖を複雑で制御できない“Undruggable”な対象から、化学的に編集・制御可能な“Druggable”な対象に変え、革新的な糖鎖医薬実現の扉を開くというビジョンを紹介していただいた。

図5. 細胞表層糖鎖機能の解明と制御を目指した化学的アプローチ

 Q&Aでは会場の参加者から、糖鎖機能や糖鎖の応用展開などついて、次々質問があり活発な議論が行われた。
(文責:事務局 吉井)


今後の開催予定

 2023年11月8日(水) 第2回FRC談話会
 2023年12月13日(水)第3回FRC談話会
 2024年1月23日(火) 第4回FRC談話会
 2024年3月13日(水) 第5回FRC談話会
  時間帯・場所:いずれも16-18時・南部陽一郎ホール