大阪大学大学院理学研究科附属フォアフロント研究センター大阪大学大学院理学研究科附属フォアフロント研究センター

分野横断プロジェクト研究部門

医薬健栄研・理学研究科協働 免疫制御プロジェクト

ケミカルバイオロジーを基盤とした免疫制御研究を推進

本プロジェクトでは、ケミカルバイオロジーを基盤とした免疫制御研究を推進します。免疫研究の中で、ワクチン開発やワクチンの効力を高めるアジュバント開発の重要性はますます増しております。国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所(医薬健栄研)は、日本発の革新的医薬品の開発と国民保健の向上を目的として活動してきており、ワクチンとアジュバント研究は同研究所の重要課題です。そこで、本協働プロジェクトは、免疫制御研究を中心に、医薬品開発・国民保健向上に関する共同研究を推進します。

特色 FEATURE

ケミカルバイオロジーを基盤とした免疫制御技術開発

有機合成化学、免疫学を専門とするチームが相互に連携する学際的プロジェクト

糖脂質・糖鎖に着目した生体内恒常性維持・免疫制御機能の分子基盤解明

代表者

深瀬 浩一

研究室HP

MOVIE

紹介動画

成果 RESULTS

研究成果

腸管関連リンパ組織共生菌糖脂質の優れたワクチンアジュバント作用

ワクチンアジュバントとは、ワクチンの効果を高めるために、ワクチンと共に投与される物質です。本研究では、粘膜免疫と全身性免疫の両方を効果的に活性化するアジュバント候補物質として、小腸粘膜組織のリンパ節であるパイエル板に共生するアルカリゲネス属細菌由来の糖脂質リピドAに着目しました。安定供給と品質管理のために、化学合成によるリピドAアジュバントの製造法を開発しました。合成リピドAアジュバントが適度な免疫活性化能を有し、粘膜免疫と全身性免疫を効果的に活性化すること、このアジュバントを含む経鼻ワクチンは、マウスモデルで病原体に対して優れた防御効果を有することを示しました。

細菌由来糖脂質リピドA
細菌由来糖脂質リピドA

今後の発展

有効性・安全性の高い次世代ワクチンアジュバントの開発

抗原のみでは効果的な免疫を獲得できないため、ワクチンの効力を高めるためにアジュバントの添加が必要であるが、有効性と安全性を兼ね備えたアジュバント開発は容易ではありません。共生菌由来分子は宿主免疫系を適度に制御するというアイデアのもと、アルカリゲネス属細菌由来リピドAを新規アジュバントとして開発しました。化学合成したアルカリゲネス属細菌由来リピドAは、粘膜免疫と全身免疫を効果的に高め、従来の注射型ワクチンに加え、経鼻あるいは経口ワクチンといった粘膜ワクチンにも使用可能であるとともに、炎症などの副反応が少なく、安全性に優れているという特徴を有しており、今後様々なワクチン開発への応用が期待されます。