大阪大学大学院理学研究科附属フォアフロント研究センター大阪大学大学院理学研究科附属フォアフロント研究センター

分野横断プロジェクト研究部門

同位体濃縮技術の開発と実用化と放射線検出器への応用

同位体濃縮技術の開発・実用化と稀事象計測用の超高感度放射線検出器への応用

化学的性質は元素が決めますが、同じ元素でも同位体によって物理的性質が大きく異なる場合があるます。幾つかの濃縮された同位体は基礎科学研究の中で特別な意味を持ちます。例えば48Caは、レプトン数非保存を検証する二重ベータ崩壊の研究や、超重元素の研究に必須の原子核ですが、必要量を供給できる濃縮技術がありません。他に工学・医療関係で必須であるのに、十分量が供給出来ない同位体が複数あります。本グループでは、次世代研究のブレークスルーとなる同位体濃縮技術の開発を行い、その応用として、二重ベータ崩壊などの超稀な事象を探索するための高感度計測機器の開発を行います。

特色 FEATURE

48Caをはじめとする希少同位体の大量生成を目指しています。

高出力レーザーを用いたり、電気泳動を利用した独創的な同位体濃縮法を開発しています。

エネルギー分解能に優れた蛍光熱量検出器と呼ばれる高性能計測器の開発をしています。

同位体濃縮できた材料を使って、シンチレータなどの放射線検出器の製作を行います。

代表者

吉田 斉

研究室HP

成果 RESULTS

研究成果

同位体濃縮方法の原理検証に成功

レーザー濃縮法および電気泳動法を基礎とした同位体濃縮法の研究に取り組んで来ており、今までの研究を基礎に、特定(48Caや6Li)の同位体に対して、濃縮技術の原理検証に成功しています。
放射線検出のエネルギー分解能を飛躍的に向上するために、極低温環境(10mK)で動作するCaF2の蛍光熱量検出器を開発しました。信号の検出技術改善や同位体を濃縮することによって、稀事象計測へ展開が可能です。

今後の発展

大量濃縮とその利用に向けて

大量の濃縮を具体化する次期装置の設計も明らかになってきました。技術の原理的な検証を終えて実用化への段階に入っています。48Caの低い同位体比(0.19%)を濃縮によって50%以上にあげることを目指しています。この48Ca濃縮は、異分野(原子力工学・光工学)研究者と協働した高出力レーザーの開発によって生産技術の確立を目指します。
この研究によって濃縮された同位体を利用して、高純度シンチレータ結晶の製作するための手法を確立します。稀事象の計測には、極低放射能環境が必須であり、放射性の不純物が極めて少ない超高純度(1グラム当たり10ナノクロベクレル)の結晶製造方法を開発します。
開発している蛍光熱量検出器は、高いエネルギー分解能を実現するための新しい放射線検出器技術を多く取り入れた装置となっています。その一例として、様々な種類の超伝導センサー(MMC、TES、KIDなどと呼ばれるもの)を利用した高感度のフォノン検出を行う素子の開発・改良が必須です。これらのセンサーの放射線検出器への利用はごく限られた目的にのみ利用されていますが、信号読み出し技術の汎用化などを進め、より広い研究課題で放射線検出器に利用できるようになると、様々な検出感度を飛躍的に向上させることも見えてきます。