大阪大学大学院理学研究科附属フォアフロント研究センター大阪大学大学院理学研究科附属フォアフロント研究センター

フォアフロント研究センター(FRC)「先端ミューオン科学による文理協力型新学術創出プロジェクト」の佐藤朗 助教らによる発表論文が、国際会議 The 20th Structural Faults + Repair-2026(SFR2026)において、同会議の最優秀賞である「NDT Award」を受賞しました。

 研究題目:Feasibility Study on Muon Tomography for Visualizing Internal Defects in Concrete Structures

本研究は、宇宙線ミューオントモグラフィによるコンクリート構造物内部欠陥の可視化可能性の検討に関する、 京都大学 および 株式会社東芝 との共同研究の成果です。京都大学の坂本亮 特定研究員が口頭発表を行い、同論文に対して SFR2026 の最優秀賞である「NDT Award」が授与されました。なお、本賞は共著者全員が受賞対象となっております。

受賞者:
坂本亮 特定研究員(京都大学 成長戦略本部)
塩谷智基 特定教授(京都大学 成長戦略本部)
佐藤朗 助教(理学研究科・FRC)
久米直人 氏(株式会社東芝)
藤牧拓郎 氏(株式会社東芝)
下線はFRC所属教員を示します。

SFR2026 のサイト:https://www.structuralfaultsandrepair.com/

プロジェクト紹介ページ:https://www.frc.sci.osaka-u.ac.jp/project/ams

NDT Award 賞状(PDF)

NDT Award 賞状

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フォアフロント研究センター(FRC)では、メンバーが、オンサイトで研究活動を紹介し合ってお互いを知り、異分野間も含む議論を通して交流を深め視野を拡げる活動として「FRC談話会」を行っています。次回は、理学研究科に新設された質量分析センター(MSC)との合同開催です。最先端の研究を専門外にも分かりやすく話していただく貴重な機会で、学生の参加も歓迎です。多数のご参加と活発な議論を期待しています。

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FRC・MSC合同談話会(第8回FRC談話会)
日時: 2026年7月21日(火)16:00〜18:00、終了後に交流会
会場: 大阪大学理学研究科J棟2階 南部陽一郎ホール (現地参加のみ)
    https://www.sci.osaka-u.ac.jp/ja/nambu-hall/#access
    交流会は、J棟3階 ミーティングスペースで行います
    (交流会費:教員3,000円、学生1,000円を予定)

座長:山口 浩靖 教授

話題提供:
(1)「医理核連携教育研究プロジェクト活動紹介」
    FRC分野横断プロジェクト研究部門
    樺山 一哉 教授

(2)「マルチオミクス(メタボロミクス、プロテオミクス)プロジェクト活動紹介」
    MSC研究推進部門
    和泉 自泰 教授

参加申込フォーム:https://forms.office.com/r/vaGH69Sg4Z
  人数把握のため、7月13日(月)までにお申し込みください。

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事務局:吉井重雄(大阪大学)
E-mail: yoshii.shigeo.sci “at-sign” osaka-u.ac.jp

フォアフロント研究センター(FRC)に所属する大塚洋一 准教授、豊田岐聡 教授らによる論文が、2026年度日本質量分析学会 論文賞を受賞しました。

本賞は、日本質量分析学会の学会誌に掲載された原著論文のうち、質量分析学の発展に大きく貢献したと認められる論文の著者に対して授与されるものです。

受賞者:
秋山毅さん(理学研究科 D3・東レリサーチセンター)
大塚洋一 准教授(理学研究科・FRC)
孫夢沢さん(理学研究科 D3)
山口真一さん(島津製作所)
豊田岐聡 教授(理学研究科・FRC)
下線はFRC所属教員

研究題目:
Mass Spectrometry Imaging of Time-Dependently Photodegraded Light Stabilizers in Polyethylene Films Using Tapping-Mode Scanning Probe Electrospray Ionization

掲載誌:
Mass Spectrometry, Volume 14 Issue 1 Pages A0173 (2025)
https://doi.org/10.5702/massspectrometry.A0173

2026年度 日本質量分析学会 論文賞 賞状

2026年度 日本質量分析学会 論文賞 賞状

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2026年3月19日(木)、大阪大学豊中キャンパス 理学J棟3階ミーティングスペースにおいて、「第12回(理学の響宴)しゅんぽじおん ー『情報』とは?ー」が開催されました。

本イベントは、研究科内外の研究者・教職員・大学院生と産業界の皆さまとの交流を促し、分野を越えた広い視野から新しい理学の“タネ”を生み出すことを目的として開催されました。当日は、16:00〜17:00にD棟D501講義室にて藤原彰夫教授による最終講義が行われ、その後、引き続き開催されました。60名を超える方々にご参加いただき、会場後方に立ち見の方が並ぶ盛況の中、活発な議論が交わされました。ご参加いただいた皆さまに、厚く御礼申し上げます。

開催概要
 日時:2026年3月19日(木)17:30〜
 会場:大阪大学豊中キャンパス 理学J棟3階ミーティングスペース
 話題提供:波多野恭弘 教授(宇宙地球)、藤原彰夫 教授(数学)
 座長:豊田岐聡 教授(フォアフロント研究センター)

 

前半:波多野教授による話題提供

はじめに、豊田教授から、6年ぶりの開催となる「しゅんぽじおん」の趣旨と経緯について説明がありました。会場にはワインやチーズなどが用意され、参加者は飲み物や軽食を手に取りながら席につきました。前半は、波多野教授から「地震予測と情報」と題して話題提供いただきました。その中では、参加者から次々と質問が寄せられ、地震予測の難しさや機微にかかわる疑問に対しても、丁寧にご説明いただきました。

後半:藤原教授による話題提供

後半は、藤原教授から「What is Information?」というテーマでお話しいただきました。若い世代への熱いメッセージも込められた内容で、参加者からの質問や意見も相次ぎ、白熱した議論が繰り広げられました。議論の締めくくりには、豊田教授から藤原教授へ退職記念品としてワインが贈呈され、参加者全員が祝福する中、6年ぶりの「しゅんぽじおん」は閉会となりました。閉会後も一部の先生方は会場に残られ、引き続き熱心な議論が交わされたとのことです。

関係記事
 開催案内:https://www.frc.sci.osaka-u.ac.jp/news/3130

(FRCシンポジウム事務局)

 2026年3月30日(月)、大阪大学豊中キャンパス 基礎工学国際棟において、FRCシンポジウム「ジオミクスと質量分析技術の新たな展開」を開催しました。年度末にもかかわらず、14の大学・研究機関・企業から70名近い方にご参加いただき、会場は盛況となりました。講演会場では活発な議論が交わされ、情報交換会でも関連研究のポスターを前に交流が深まりました。ご参加いただいた皆様に、厚く御礼申し上げます。

開催概要
 日時:2026年3月30日(月)14:00〜17:30(情報交換会 17:45〜)
 会場:大阪大学豊中キャンパス 基礎工学国際棟 シグマホール(対面のみ)
 主催:⼤阪⼤学⼤学院理学研究科 附属フォアフロント研究センター
 共催:⼤阪⼤学⼤学院理学研究科 共通施設質量分析センター

 本シンポジウムは、先端質量分析技術を基点として多様な分野に展開する分野横断型学術「ジオミクス」の活動と成果を広く知っていただくことを目的として開催されました。あわせて、連携のさらなる拡充・強化を図るとともに、当年度に新たに設置された質量分析センターの活動や装置共用体制を紹介し、広く活用していただく機会としました。

第一部の講演の様子

 第一部では、⼭梨県富⼠⼭科学研究所の吉本充宏研究管理幹、東京⼤学の⾓野浩史教授にご登壇いただき、富士山の成り立ちや特徴、通説を覆す新たな発見、さらには先端質量分析技術を用いて火山や地殻の「息吹」を捉える最新研究についてご講演いただきました。第二部では、本学の和泉⾃泰教授、⼤塚洋⼀准教授から、⽣命科学における質量分析の二つの潮流であるオミクス解析技術とイメージング技術に関する研究成果が紹介されました。また、豊⽥岐聡教授からは、質量分析センターの概要に加え、装置共用拠点としての機能や利用方法について詳しい説明がありました。各講演後には、参加者から次々と質問やコメントが寄せられ、活発な議論が展開されました。

情報交換会で研究紹介ポスターを前に意見を交わす参加者

 シンポジウム終了後には、講演会場前のホワイエにて情報交換会を開催しました。関連研究グループによる研究紹介ポスターが並ぶ中、さまざまな分野・組織からの参加者が、随所でポスターを前に意見を交わす姿が見られ、会場は大いににぎわいました。本シンポジウムを通じて、多くの方にジオミクス研究や質量分析技術の応用・活用に関心を持っていただくとともに、研究者間のつながりを広げる貴重な機会となりました。今後、関連分野を横断した交流と連携のさらなる進展が期待されます。

当日プログラム
 開会挨拶 豊⽥岐聡(FRC センター長)
 【第一部】⽕⼭と地殻のジオミクス 
      座長:⼤阪⼤学|豊⽥岐聡(教授)
  14:02 富⼠⼭との共⽣ ― ジオミクス連携で⾒えてくる世界 ―
      ⼭梨県富⼠⼭科学研究所|吉本充宏(研究管理幹)
  14:45 オンサイト同位体分析が拓く新たな⽕⼭・断層の活動度モニタリング
      東京⼤学|⾓野浩史(教授)
 【第二部】⽣命科学における質量分析のトレンドと装置開発・共⽤拠点 
      座長:⼤阪⼤学|寺田健太郎(教授)
  15:45 ⽣命科学研究の深化を⽬指した質量分析マルチオミクス解析技術の開発
      ⼤阪⼤学|和泉⾃泰(教授)
  16:30 細胞代謝変容を可視化する質量分析イメージング技術の開発
      ⼤阪⼤学|⼤塚洋⼀(准教授)
  17:15 理学研究科共通施設 質量分析センターの紹介
      ⼤阪⼤学|豊⽥岐聡(教授)
 (17:45〜 情報交換会)

ポスター発表
 北海道大学 農学研究院 当真要教授
 東北大学 大学病院薬剤部 前川正充准教授
 東北大学 農学研究科食品機能分析学分野 加藤俊治准教授
 筑波大学 生命環境系 丸岡照幸准教授
 東京大学 先端科学技術研究センター 角野浩史教授
 山梨県富士山科学研究所 富士山火山防災研究センター 山本真也主任研究員
 山梨県富士山科学研究所 富士山火山防災研究センター 西澤達治研究員
 大阪大学 理学研究科附属フォアフロント研究センター 豊田岐聡教授
 大阪大学 理学研究科附属フォアフロント研究センター 益田勝吉教授
 大阪大学 理学研究科共通施設質量分析センター 和泉自泰教授
 大阪大学 理学研究科共通施設質量分析センター 秦康祐講師
 大阪大学 理学研究科共通施設質量分析センター 三宅ゆみ助教
 大阪大学 理学研究科共通施設質量分析センター 鳥越大平研究員
 大阪大学 理学研究科宇宙地球科学専攻 寺⽥健太郎教授
 大阪大学 理学研究科物理学専攻 大塚洋一准教授
 関西大学 化学生命工学部化学・物質工学科 川﨑英也教授
 公立鳥取環境大学 環境学部 山本敦史准教授

関係記事
 開催案内:https://www.frc.sci.osaka-u.ac.jp/news/3139

(FRCシンポジウム事務局)

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以下の公開シンポジウムを開催します。


FRCシンポジウム「ジオミクスと質量分析技術の 新たな展開」
日時:2026年3月30日(月)14:00 〜 17:00
会場:大阪大学 豊中キャンパス 基礎工学国際棟 シグマホール(対面のみ)


火山・地殻、生命科学分野における先端質量分析技術を用いた最新研究に加え、新設された質量分析センターの概要とセンターでの研究をご紹介します。
当日は、会場前のホワイエにて各分野の関連研究グループによるポスター展示を行い、シンポジウム終了後にはポスター展示の場で情報交換会を行います。
参加費は無料です。お気軽にお越しください。

参加登録は【こちら】。皆様のご参加をお待ちしております。
案内ポスター(PDF)

 

会場アクセス:大阪大学 豊中キャンパス 基礎工学国際棟 シグマホール


 

問い合わせ先:吉井重雄(大阪大学FRC)yoshii.shigeo.sci“at-sign”osaka-u.ac.jp 

お待たせしました。2019年11月7日以来、6年ぶりに「しゅんぽじおん」が帰ってきます。
本イベントは、研究科内外の研究者(教職員・大学院生)および産業界のみなさまの交流を促し、
分野を越えた広い視野から新しい理学のタネを生み出す企画です。
第12回(理学の饗宴)のテーマは「情報とは?」。 当日は藤原彰夫氏(数学)と
波多野恭弘氏(宇宙地球)がネタ提供を行い、続いて歓談(饗宴?)タイムとなります。
ワインとチーズをご用意し、登録不要で夕刻の1時間程度、どなたでもご参加いただけます。

なお当日16:00〜17:00には、D棟5階D501講義室にて藤原彰夫氏による最終講義が予定されています。
最終講義の後、そのままぜひお立ち寄りください。

みなさまのご参加をお待ちしております。

ポスターは「こちら

日時: 2025年3月21日(金) 16:00〜18:00
会場: 大阪大学理学研究科J棟 南部陽一郎ホール
座長:益田 勝吉 教授
話題提供:

(1)大塚 洋一(挑戦的個人研究部門
        ピコ液体の精密流体制御による極微質量分析イメージングの創成プロジェクト代表・准教授)
(2)中川 拓郎(挑戦的個人研究部門
        染色体異常の発生メカニズムの解明プロジェクト代表・准教授)

概要:
(1)前半では、「ピコ液体の精密流体制御による極微質量分析イメージングの創成」プロジェクト代表の大塚先生から、独自の抽出ーイオン化法の開発の経緯と最近の研究成果をお話しいただいた。生体組織では細胞内外で多種多様な化学反応が生じ、健康状態が維持される。したがって、生体組織に含まれる分子の変化を精密に分析する技術は、ライフサイエンス分野の研究開発において重要となる。質量分析イメージング(MSI)は、試料内の分子の分布を画像として可視化する技術である。


図1. 質量分析イメージングの概要

 大塚准教授は、生体組織の脂質成分のMSIを行うために、独自の抽出ーイオン化技術(t-SPESI)の開発を主導してきた。t-SPESIは、原子間力顕微鏡とエレクトロスプレーイオン化を融合した技術であり、ピコリットル以下の極微量の溶媒を用いて、生体組織のマイクロスケールの領域に含まれる成分を分析することを可能にする。


図2. t-SPESIの装置構成と特徴

 高精細な質量分析イメージングを実現するための様々な要素技術の開発に取り組むと共に、異分野の研究者との共同研究を推進してきた。一例として、マウスの精巣組織のMSIでは、精子形成に重要なドコサヘキサエン酸(DHA)を含有する脂質などの分布を可視化することに成功した(図3)。


図3. マウス精巣組織のリン脂質の分布

 本技術を様々な生体組織に適用し、疾病を引き起こす多様な分子の分布を調べることで、新たな治療法や診断技術の創成に繋げていきたいと考えている。Q&Aでは、本技術による細胞内構造の観察の現状と展望、代謝分析への展開の可能性、生体組織の物理的性質も含めた計測手段としての発展性などについて、各分野の専門家との活発な議論が行われた。

(2)後半では、「染色体異常の発生メカニズムの解明」プロジェクト代表の中川先生から、染色体のセントロメア領域のDNA反復配列を「のりしろ」にして起こる染色体異常の発生メカニズムについて報告いただいた。
 まずは真核生物の染色体の基本的な構造と染色体に含まれるDNAの役割について説明があった。DNAを鋳型にして、転写と呼ばれる細胞内の反応によりRNAが合成される。次に、RNAを鋳型に翻訳と呼ばれる反応によりタンパク質が合成される。タンパク質の種類や量などによって細胞ひいては生物の運命が決定される。しかし、転座や欠失などの染色体異常が起きるとDNAが変化するために、がんなどのヒト遺伝性疾患が引き起こされること、また、がんは現在日本人の死亡原因の第一位であることが紹介された。


図4. 染色体構造とDNAの役割

  真核生物である分裂酵母を用いた解析により、染色体のセントロメア領域に存在するDNA反復配列を介して同腕染色体と呼ばれつ異常染色体が形成することを明らかにした。同腕染色体はセントロメア領域を中心に左右の染色体腕が鏡像関係となった異常染色体であり、ダウン症やターナー症の原因となるだけでなく、ヒトのがん細胞でもよく見られる。これまでに、DNA相同組換え、DNA複製、細胞周期チェックポイント機構、ヘテロクロマチン構造が染色体異常を抑制する一方、Rad52をはじめ幾つかの遺伝子は染色体異常を促進することを明らかにした。今回は、ヘテロクロマチン構造が正常に形成されないとき、転写によりRループと呼ばれるDNA-RNAヘテロ二本鎖を含む異常な核酸構造が形成され、それにより染色体異常が起こることが説明された。今後、この系を用いて、染色体異常の発生に関与する新たな因子を同定し、その機能を解明することで染色体異常の発生メカニズムの解明を目指す。


図5. 分裂酵母のセントロメア領域で起こる染色体異常

 Q&Aではヒトを含め他の真核生物で起きる染色体異常との共通原理、細胞膜と染色体異常との関係、更には、物理化学的な応用研究への展開などについて活発な議論があり大いに盛り上がった。
 最後に、話題提供者のお二人からFRCで活動する中で得たものとして、分野を越えた研究者間の議論や交流の重要性を指摘いただき、参加者からも多くの賛同の声があった。

(文責:FRC談話会事務局)

日時: 2025年1月22日(水) 16:00〜18:00
会場: 大阪大学理学研究科J棟 南部陽一郎ホール
座長:松本 卓也 教授
話題提供:

(1)吉田 斉(分野横断プロジェクト研究部門
        同位体濃縮技術の開発と実用化と放射線検出器への応用プロジェクト代表・准教授)
(2)佐藤 朗(分野横断プロジェクト研究部門
        先端ミューオン科学による文理協力型学術創出プロジェクト代表・助教)

概要:
(1)前半では、「同位体濃縮技術の開発と実用化と放射線検出器への応用」プロジェクト代表の吉田先生から “ニュートリノを放出しない二重ベータ崩壊” の発見を目指す挑戦についてお話しいただいた。極めて稀な原子核の崩壊様式として、二重ベータ(ββ)崩壊がある。ニュートリノがマヨラナ粒子(粒子と反粒子が同じであるフェルミオン)である場合に、ニュートリノを放出しない二重ベータ(0νββ)崩壊が起こる。その半減期は、1028年以上と予測されており、 発見された場合の物理的意義が非常に大きく、素粒子物理学に突き付けられたいくつかの謎(物質優勢宇宙、ニュートリノだけが極めて質量が小さい、ニュートリノ質量の絶対値や階層性など)の解明につながると言われている。


図1. ニュートリノを放出しない二重β崩壊とその探索の物理的意義

大阪大学が中心となり推進しているCANDLES実験プロジェクトは、48Ca同位体を使った0νββ崩壊の発見を目指している。 ββ崩壊核種としての48Caには、天然同位体比が低く(0.2%)、大量に同位体濃縮する手法が確立していないという欠点がある。他方で、0νββ崩壊のような極稀事象の探索には、極低バックグラウンド環境が必須であり、48Ca同位体は、背景事象を増やすことなく感度を500倍改善できる潜在能力を有している。当プロジェクトでは現在、大強度レーザーを利用した新しい同位体濃縮手法の開発を進めており、原理検証や大量生成に向けた取り組みについて紹介された。


図2. Ca同位体濃縮の原理と濃縮手法開発装置

Ca同位体濃縮の開発とともに、背景事象の低減には検出器のエネルギー分解能が重要である。素粒子標準模型で許されるニュートリノを放出するββ崩壊は、 0νββ崩壊よりも崩壊率が8桁以上も大きく、Q付近で0νββ崩壊事象の背景事象になってしまう。プロジェクトでは、新たに極低温(~10 mK)に冷却したCaF2結晶を放射線の検出に利用することで、エネルギー分解能の優れた蛍光熱量検出器を開発している。この検出器開発に向けた取り組みと現状についても紹介された。


図3. エネルギー分解能と背景事象除去性能の優れた蛍光熱量検出器の原理

(2)後半では、「先端ミューオン科学による文理協力型学術創出プロジェクト」代表の佐藤先生から、大阪大学を中心としたミューオン科学の展開状況についてお話しいただいた。ミューオンは、宇宙を構成する最小単位である素粒子の一つで、電子とよく似た性質を持つが、質量は電子の約207倍も大きい。従来、ミューオンは基礎科学の研究対象やプローブとして活用されてきたが、近年では、地上に降り注ぐ宇宙線ミューオンを利用したピラミッドなどの大規模構造物の透視や、大型加速器によって人工的に生成されたミューオンビームを用いた文化財の非破壊元素分析など、多様な応用研究が活発に展開されつつある。


図4. 連続状ミューオン施設RCNP-MuSICの装置。 本学吹田キャンパスの核物理研究センター内に設置されている。

 大阪大学は、国内唯一の連続状ミューオン施設 RCNP-MuSIC を有するとともに、ミューオン研究を得意とする多様な分野の研究者が多数在籍しており、ミューオン研究において極めてユニークな環境にある。この優位性を生かし、大阪大学にミューオン科学創成の拠点を設置することを目指して、文系・理系の枠を超えて、学内外の研究機関や産業界と協力しながら、ミューオンの新たな活用開拓、啓蒙活動、人材育成に取り組んでいることが紹介された。


図5. ミューオンX線の発生原理。 特性X線のエネルギーは原子核を周回する粒子のエネルギーに比例するため、ミューオンX線は高いエネルギーを持つ。

 また、ミューオンの応用利用例として、ミューオン特性X線を用いた希少資料の非破壊元素分析の進展についても説明があった。ミューオン特性X線は、電子特性X線に比べて約200倍高いエネルギーを持ち、この特性を利用した本分析手法では、古代青銅器のように表面が腐食した資料であっても、その状態に左右されることなく、特定の深さをピンポイントで分析できる。このため、考古学や文化財科学の分野で高い関心を集めている。すでに、緒方洪庵の薬剤やリュウグウの石、古代ローマの鏃など、多くの資料が分析されており、その成果はニュースなどでも大きく取り上げられたことが紹介された。


図6. ミューオンX線元素分析における分析領域。荷電粒子であるミューオンはその入射エネルギーを調節することで、測定資料の任意の深さをピンポイントに選択して分析することができる。

(文責:FRC談話会事務局)


今後の開催予定

 2025年3月21日(金) 第7回FRC談話会
  時間帯・場所:16-18時・南部陽一郎ホール