大阪大学大学院理学研究科附属フォアフロント研究センター大阪大学大学院理学研究科附属フォアフロント研究センター

挑戦的個人研究部門

波動関数理論に基づく高精度な第一原理計算手法の開発

物質中の電子間相互作用を精緻に取り扱う、新しい理論手法の開発

本部門では、物質中の電子間相互作用を精緻に取り扱うことのできる、新しい理論手法の開発を目指しています。物質の示す多種多様な性質は、その構成要素である電子や原子核の間に働く、複雑な相互作用に起因しています。その基礎方程式を虚心坦懐に解く方法を第一原理計算といいます。波動関数理論という枠組みに従う新しい第一原理計算手法を開発することで、物質の複雑な電子状態や性質を、正確に記述・予言できるようになることを目指します。

特色 FEATURE

電子間相互作用の正確な記述という、物質科学の根幹となる問題に挑んでいます。

非自明な電子状態を示す強相関電子系をターゲットに据えています。

独自の計算手法および計算コードを開発しています。

開発している計算手法が、今後の物質科学研究において基盤技術となることを目指しています。

代表者

越智 正之

研究室HP

MOVIE

紹介動画

成果 RESULTS

研究成果

第一原理計算手法の高精度化、およびその検証

これまでの研究成果として、波動関数理論に基づいた計算の高速化(アルゴリズム開発)、電子間相互作用を記述するための相関因子の高精度化、光による電子励起状態の記述、などを実現しました。高精度である一方で計算コストの高くなりやすい波動関数理論ですが、計算を高速に実行できるアルゴリズムが開発されたことで、今後の幅広い応用が期待されます。また、比較的シンプルな半導体や絶縁体に限定はされるものの、どのような相関因子によって精度向上が可能かが明らかになったことで、今後のさらなる精度向上のための指針が得られました。また、電子励起状態、特に励起子を第一原理的に記述できることが明らかになったことで、その適用範囲の広さも確かめられることとなりました。

(左)いくつかの計算手法による固体のバンドギャップ計算値の比較(本部門で開発している手法:TC法)、(右)TC法による固体LiFの光吸収スペクトル
(左)いくつかの計算手法による固体のバンドギャップ計算値の比較(本部門で開発している手法:TC法)、(右)TC法による固体LiFの光吸収スペクトル

今後の発展

物質科学研究において基盤技術となる理論の確立へ

第一原理計算は、未知現象の原理解明といった基礎科学的な用途でも、また高機能性物質の理論探索のような応用科学的な用途でも用いられ、現代の物質科学研究において極めて重要な役割を果たしています。しかし現状の第一原理計算では、計算精度が足りないために記述できない対象や現象、計算コストが大きすぎて取り扱うことのできない多自由度(多粒子)系、など、様々な問題が存在します。本部門で開発している計算手法も、より広範な対象に適用可能な高精度相関因子の探索、その最適化の理論手法の開発など、これから解決すべき課題が多く存在します。これらを解決していくことで、未来の物質科学研究において基盤技術となるような理論の確立を目指します。

原子系での相関因子の例
原子系での相関因子の例