物質・材料に内在する神経型演算機能を原子・分子論から明らかにして 「マテリアル知能」と 呼べる新しい分野横断的学術領域を創出するとともに、ロボットなどへの実装を目指します。
理学研究科と産業科学研究所における原子・分子レベルの精密な物性計測に基づき、非線形性やヒステリシスなど神経型特性を持つナノスケールネットワークを構築する。情報科学研究科・情報数理学専攻の協力のもとに、電子やイオンの振る舞いに関する数理解析を行い、九州工業大学と共同で、知覚演算デバイスとしてロボットをはじめとする社会実装を目指す。さらに、奈良女子大学の協力により、高大連携を含むアウトリーチ活動も展開する。
特色 FEATURE
物質・材料自身に内在する情報機能を導き出す、化学、物理、情報学が融合した新しい研究領域を創出する。
生体のように、リジットで精密な機能コアとランダムネスやノイズが調和的に働くシステムの指導原理を探る。
現在のフォンノイマン型計算機を利用したソフトウェアベースの人工知能が直面する計算資源と電力の増大に対処する道筋をつける。
フォアフロント研究センターをオランダ、アメリカ、ドイツ、ポーランドおよび国内数十人の研究者から構成された学術振興会の国際研究拠点の核として運営する。
成果 RESULTS
研究成果
分子一滴で音声認識 ―マテリアルから知能を引き出す!―
溶液を滴下するだけの簡便な手法で導電性高分子の一種である水溶性ポリアニリン(SPAN)のランダムネットワークを作製し、湿気のある環境下で酸化還元現象に由来するヒステリシス電気特性の電気化学反応が現れることを明らかにしました。また、ニューラルネットワークの一種である物理リザバー計算をSPANのネットワークで動作させることで0から9までの音声認識を実現し、超低消費電力計算やAIロボットへの組み込みなど、次世代の人工知能システムを構成するデバイスとして期待できることを示しました。ニューラルネットワークの計算方法を有機分子ナノ材料を用いて再現したといえ、有機分子ネットワーク自体が高密度で小型の人工知能となりうる可能性を示しており、ナノ分子科学と情報科学にまたがる新しい学際的な学術分野の開拓に向けた扉を開きました。